京町家のくらし – 京都 和食器のオンライン販売 立吉オンラインショップ_TACHIKICHIS //contents 1752年に京都で創業した老舗ブランド「立吉」。和食器を中心にオリジナル商品と京焼や波佐見焼や九谷焼など全国の産地商品や作家作品をセレクトしご用意しております。おしゃれなご結婚のお祝いやシーズンギフトなどこだわりの贈り物としてもご利用いただけます。 Mon, 20 May 2024 00:37:49 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.6.5 京町家のくらし //contents/read/kyo_machiya/ Wed, 12 Apr 2023 02:01:48 +0000 #

 

杉本節子さんに聞く京町家のくらし

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    京の人々は四季の移ろいを楽しみ、

    心地よいに過ごすため、
    くらしに様々な工夫を凝らしてきました。
    それらは長年にわたって研ぎ澄まされ、
    その所作、室礼には美しさが宿っています。
    歴史ある杉本家のご当主杉本節子様から
    凛とした京町屋の暮らし方を学びます。

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京町家のくらし 1月 //contents/read/kyo_machiya/kurashi02/ Fri, 14 Apr 2023 05:30:53 +0000 #

第2回 杉本節子さんに聞く「京町家の年迎え」 京町家のくらし

杉本節子さんに聞く京町家のくらし
杉本家当主 杉本節子さん
京の人々は四季の移ろいを楽しみ、心地よいに過ごすため、くらしに様々な工夫を凝らしてきました。それらは長年にわたって研ぎ澄まされ、その所作、室礼には美しさが宿っています。歴史ある杉本家のご当主杉本節子さんから、凛とした京町家の暮らし方を学びます。
重要文化財杉本家住宅:町家としては京都市内最大規模に属し、表屋造りによる大規模な町家構成の典型を示します。建造物全体にわたって江戸時代に熟成された京大工の技量が遺憾なく発揮され、江戸以来の大店の構えを現在によく伝えています。

師走の京

年の瀬を迎えた京の街。賑やかさを増してゆく街頭に、そこを行き交う人々も足早になります。墨痕鮮やかに名優たちの看板が並ぶまねき上げ、社寺では終い行事の縁日や大根炊きの湯気。店先に並び始めた千枚漬の鮮やかな白さなど、師走の風物詩に事欠かない京都は、底冷えの寒さを一時忘れさせる彩りで一年を締めくくります。
京都有数の賑やかなエリア、四条烏丸からもほど近い杉本家住宅。邸内へ一歩足を踏み入れると、そこはおもての喧噪とはうって変わり、静かで穏やかな時間が流れています。幾年もの歳月を超え、いまもそこにあり続ける家屋や調度品、建具の数々が温かな空間を作り訪れる人を包んでくれるようです。

おだやかな冬晴れの日を選んで、ふたたび杉本家住宅へお邪魔しました。

  • 左 )家紋付の正月祝膳。杉本家は男性が裏片喰紋、女性が花菱紋。とされている。写真は杉本節子さんの膳組。
  • 右上)蓋と身の組み合わせに注意しながらやさしく扱う。
  • 右下)保管用の袋は、防虫効果が考慮され、藍で染められたもの。

漆器のお手入れ

杉本節子さんはお正月に備えて漆器のお手入れ中。数あるお道具や器を確認し、軽く拭き清めてゆきます。
杉本節子さんによると、片付ける時に意外に見落としやすいところはお椀の蓋のつまみと高台の部分。いずれも使うときに手が触れるため、手の油分が残りやすいのだそう。藍染の袋から現れたお椀には、お椀同士がくっつかないようにひとつひとつ紙が挟まれ、衝撃を和らげるための真綿が敷かれています。ほのかな温度を感じるような朱色の発色は、使い込まれて一層の深みを増しており、大切に扱われてきたことがうかがえます。
杉本家では、お正月用のお椀は一人に一つ。自分用のお椀でお正月を迎えます。「紋入りのお椀を拭き清めているとお正月が近づくことを感じ、心静かにこの一年の来し方を思うものです」と杉本節子さん。慌ただしい師走にあっても暮らし方のリズムを変えず、ひとつひとつを丁寧にこなしてゆくことが大切ということでしょうか。

  • 左 )清浄さを思わせる白い食材のみで仕立てられるお雑煮。添えられた三種の祝肴は数の子、ごまめ、たたき牛蒡。
  • 右上)頭芋には、人の頭になれるようにとの願いが込められている。
  • 右下)杉本家では大福茶に入る小梅と結び昆布は二つづつ。

杉本家のお雑煮

杉本家のお雑煮には白い食材以外は用いません。丸餅のほか、頭芋(かしらいも)と小芋に大根、それに鰹節は天盛りにします。頭芋、小芋、大根の処理も独特なもの。角が立たないようにいずれも面取りはせず、蒸して皮をむき丸く整えられます。お味付けはもちろん白味噌。
杉本家のお雑煮は、元日と二日は白味噌仕立て、三日は水菜の入ったすまし仕立てで供されます。一見、お雑煮椀の蓋と思われた小さな器は“かさ”と呼ばれるもので、数の子、ごまめ、たたき牛蒡といった三種の祝肴を盛るために用いられます。
少し早いお正月の話題に、これも欠かせないでしょうと杉本節子さんが淹れて下さったのは大福茶。小梅と結び昆布に煎茶を注いだものです。空也上人の疫病平癒の故事にちなんで新年の無病息災を祈ります。ほんのりとした塩味と酸味が加わるとお茶の温かさが一層体にゆきわたるようです。

お正月のうつわに寄せて

数多ある日本の由緒行事のなかでもお正月は特別なもの。来る一年に思いも新たにする寿ぎのひとときは、少し居ずまいを正して。立吉のお正月のうつわは、由緒的な吉祥文様が施され、新年を祝う席にふさわしい佇まい。楽しくもきちんと改まった趣を演出します。
杉本節子さんが目にとめられたのは、染付七宝三段重。磁器ならではの取り扱いやすさと染付の清楚な絵付けが、ハレの正月料理をより華やかに引き立ててくれますね。というのがおススメのポイント。「一段をお一人用のうつわとして使っても面白いですね」と使い方のアドバイスもいただきました。
当主の「お祝いやす」の一言で始まる杉本家のお正月。商家として華美を求めず、あくまでも暮らしの延長にある祝い事としてのお正月を迎えた様子は、町家の風情にも似て本質が宿る磨かれた美しさを感じるものでした。暮れ行く今年。百年以上にわたってその様子を見守ってきた町家もまたひとつ歴史を重ねます。

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京町家のくらし 2月 //contents/read/kyo_machiya/kurashi03/ Fri, 14 Apr 2023 05:30:53 +0000 #

第3回 杉本節子さんに聞く「町屋を彩る花の風情」 京町家のくらし

杉本節子さんに聞く京町家のくらし
杉本家当主 杉本節子さん
京の人々は四季の移ろいを楽しみ、心地よいに過ごすため、くらしに様々な工夫を凝らしてきました。それらは長年にわたって研ぎ澄まされ、その所作、室礼には美しさが宿っています。歴史ある杉本家のご当主杉本節子さんから、凛とした京町家の暮らし方を学びます。
重要文化財杉本家住宅:町家としては京都市内最大規模に属し、表屋造りによる大規模な町家構成の典型を示します。建造物全体にわたって江戸時代に熟成された京大工の技量が遺憾なく発揮され、江戸以来の大店の構えを現在によく伝えています。

第3回 町家を彩る花の風情

市内最大規模の町家として知られる杉本家には数多くのお部屋があります。どのお部屋もその目的・役割に応じて多彩な特徴を備えており、そこで営まれた暮らしぶりや、込められた思いに触れることができます。室内の随所には花が生けられ、お部屋に彩を添えるとともに、訪れた方の心を和ませる静かな美しさを醸しています。
現代のくらしに慣れた目には少しほの暗さを覚える町家の屋内では、花の色、姿かたちをより鮮明に感じ、それらが空間に与える効果をはっきりと実感することができます。
今回は、様々な花材と花器を携え、杉本家を訪問します。特色あるお部屋にあわせ、お花を活けてまいりました。

寿ぎの風情漂う南天と松に、雪を見立てたかすみ草をあしらいました。(胡蝶蘭・松・南天・かすみ草)

掲載商品:八重がすみえくぼ 花生

店の間

綾小路通に面する大戸をくぐると、そこは商家として商いを行う場であった店の間。由緒と重ねてきた年月を感じる重厚な看板が迎えてくれます。磨き込まれて深い飴色を湛える建具と調度品。格子戸を通してやわらかい光が注ぐ店の間は、訪れる人を最初に迎える空間です。

軸とお飾りに合わせ、丸みを帯びた風情。赤柳で円相を描き、胡蝶蘭の清楚な白を添えました。(胡蝶蘭・赤柳)

掲載商品:青輝天目 花生

八畳の間

西向きに建て込まれ、聚楽壁のほんのりとした発色も明るく心緩むお部屋。主に杉本家の方々のくつろぎの場として用いられました。隣接する露地庭との境にも縁側を設けない数寄屋の造りは、部屋に居ながら時の経過や季節の移ろいを身近に感じられます。

温かみを帯びた空間に開花を促されたような色とりどりの花。取り合わせも楽しく、華やかさを演出しました。
(アネモネ・チューリップ・スイトピー・水仙)

掲載商品:青輝天目 花生

洋間

昭和初期に店用の客間から洋間へ改装されたお部屋。天井を高く取り直し、床材にはコルクが用いられた一方、町家ならではの格子の縦基調の趣が生かされています。それらはアールデコ調で統一された家具調度品とも見事な調和を見せ、昭和初期の浪漫の香り高い一室です。

冬の花の代名詞とも言える水仙。ふんだんに活け込めば、この季節ならではの清浄な香りを楽しめます。
左(姫水木・蘭・たちかずら)
右(水仙・山茶花)

  • 掲載商品:(左)紅志野 姫花生
  • 掲載商品:(右)織部唐草 花生

仏間

杉本家は浄土真宗の門徒として厚く帰依し、かつて本山勘定方をも務めました。深い信仰ゆえ、独立棟として西側に張り出す造りとするなど、仏間の建立に際しては様々に心が配られたことが伺えます。隣接する仏間庭では青海波に敷かれた滑り石と唐銅水盤にゆれる水面が心静まる風情をいっそう深めます。

春を待つ心持ちを、ほんのりと色づく薔薇に込めました。格調高い砂摺の壁の深く複雑な発色も上質な。
(姫水木・薔薇・南天)

  • 掲載商品:清秀 花生

座敷

大切な客人を迎え、ハレの日の行事等の行われる座敷は、邸内において最も格式の高い空間です。七.八九尺の高さに棹縁天井を張り、角柱を使っての書院造にも似た、格調高く、単純で大らかな構成の美しさをみせています。九条土を塗り上げた砂摺の壁は、明かりをかざしてみれば黒緑色に群青が混ざった色合いで、北向きの座敷でかすかな光をも明るく感じることができます。

花の役割

大店の建築遺構として高い価値を有する杉本家住宅には、見学者はじめ沢山の方が訪れます。お客様を迎えるにあたっては、掃き清め、水を打つ、という基本にはじまり、香や軸を選び、心地よさを味わっていただくための空間を準備がなされ、随所に活けられるお花もこの室礼のひとつに数えられます。杉本節子さんは花の役割としては、美しさを愛でることに加え、より大切な要素があるとおっしゃいます。
「美や技を愛でていただくのもひとつですが、お花を置くことでその空間におもてなしの心遣いを行き届かせる、その思いを込める事がなによりも大切かと思います。」構えることなくお越しになる方のことを思い、心を込めて活けることが大切という事ではないでしょうか。町家の空間とお花。それらは互いに引き立て合い、好ましく影響し合う結びつきを感じるものでした。

立吉の花生

「町家の風情と個性豊かな立吉の花生との組み合わせも味わいある風情を生んでいますね。」と
杉本節子さんにお褒めいただいた立吉の花生は、素材や技法に富んだラインナップです。
くらしのそばにお花を。彩りと潤いのある日々をお楽しみください。

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京町家のくらし 3月 //contents/read/kyo_machiya/kurashi04/ Fri, 14 Apr 2023 05:30:53 +0000 #

第4回 杉本節子さんに聞く「京町家のおひなさん」 京町家のくらし

杉本節子さんに聞く京町家のくらし
杉本家当主 杉本節子さん
京の人々は四季の移ろいを楽しみ、心地よいに過ごすため、くらしに様々な工夫を凝らしてきました。それらは長年にわたって研ぎ澄まされ、その所作、室礼には美しさが宿っています。歴史ある杉本家のご当主杉本節子さんから、凛とした京町家の暮らし方を学びます。
重要文化財杉本家住宅:町家としては京都市内最大規模に属し、表屋造りによる大規模な町家構成の典型を示します。建造物全体にわたって江戸時代に熟成された京大工の技量が遺憾なく発揮され、江戸以来の大店の構えを現在によく伝えています。

第4回 京町家のおひなさん

のどかな陽光に花々がほころびはじめると、京の町にも待ちわびた春の到来です。ぬくもりを帯び始めた空気のなか華やかに祝われる桃の節句は、五節句のなかでも特別なもの。
各家ではおひなさんを美しく飾り、社寺においては様々な行事が古式ゆかしく執り行われます。杉本家では、旧暦の3月3日に合わせて4月上旬にお祝いをされるのがならわしです。時代を超え、大切に伝えられてきた杉本家のおひなさんをご紹介します。

源氏枠の御殿飾りと有職雛
京都では御所の天子南面の理にならい、向かって右側が男雛、左側が女雛とされます。

有職雛

京都のおひなさんは、公家の装束や調度が忠実に再現された有職雛が基本です。御所や公家方と近しい関係にあった京の人々には、公家文化への強い憧れがあり、その思いが表れた雅なおひなさんです。
杉本家の有職雛は明治期のもので、源氏枠と呼ばれる御殿仕様の飾りが特徴です。その名のとおり、源氏絵の表現さながらに、天井を貼らず吹き抜けにしていることでおひなさんのお顔が陰に隠れることなく、胡粉が生む柔らかな白さと豊かな表情を愛でることができます。
その表情は百年を超えたとは思えないほど鮮やかで凛とした佇まい。普段は巻き上げておく御簾をおろし、ぼんぼりに蝋燭を灯せばお内裏様とお雛様の姿がほんのり浮かびいかにも奥ゆかしい風情になります。

享保雛
金襴や錦が用いられた装束は豪奢ながら大陸風のおおらかさが漂います。

享保雛

杉本家では「古雛さん」と呼び親しんでおられる、江戸時代後期の雛人形です。その名のとおり享保年間より始まったとされ、江戸文化華やかなりし時代を反映したやや大型で豪華な装束をまとったこの様式は、その後長きにわたって愛され、明治・大正の頃まで作られ続けました。
綿を入れて丸く膨らんだ女雛の袴の形、外側に張った男雛の両袖口が特徴的です。お顔立ちは精神性を湛えた能面を思わせる端正なもの。静かな笑みをたたえる口元、切れ長で涼し気なまなざしが心に残ります。杉本家では、雛遊びを詠んだ和歌の軸とともに春の座敷床に静かに飾られます。

市松人形
ふくよかで愛らしい表情の市松人形。京都では「いちまさん」とよばれ、おひなさんとともに飾られます。
美しく整えられたおひなさんを愛でながらふっと心ほどくひと時。はんなりとしたお菓子と柔らかな桃色のうつわが春めいた風情を運びます。

おひなさんの事々

杉本家のおひなさんとお道具類は中蔵と呼ばれる土蔵に収められています。京の町は季節により温湿度が大きく変化します。土と漆喰により庫内の環境を一定に保つ土蔵がおひなさんを守り、変わらぬ美しさをいまに伝えてくれます。
おひなさんとそれにまつわるお道具類は数多く、出し入れやそれぞれの配置に費やす手間はなかなかのもの。とくに段飾りの配置は左右対称が基本であり、少しの角度や間隔の違いが全体のバランスを損なうため、何度も微調整を重ねます。「正面から見ながら細かな調整を繰り返します。手間はかかりますが正しく置かれたおひなさんはひときわ上質な表情でお返ししてくれます」杉本節子さんは些細と思える事にこそ手間をかける大切さをこのように語られます。

上巳の節句のお献立

いまでは桃の節句が一般的ですが、3月3日は3月上旬の巳の日ということで古来より「上巳の節句」とも呼称されています。杉本家の上巳の節句は、ばら寿司、蛤のおすまし、身しじみの炊いたん、赤貝のぬた、姫カレイの干物がお決まりのお献立です。なかでもばら寿司は春らしい味わいと彩りにあふれたご馳走。こちらもすっきりとしたながら、具材の丁寧な下ごしらえが大切なお料理です。
「お店で買い求めたものでも、TPOに応じたうつわに移し替え、木の芽、錦糸卵などの彩のものを追加するなどの工夫とちょっとした手間を加えれば、お料理もより美味しそうな姿で応えてくれます」と杉本節子さんはおっしゃいます。
和のうつわは多彩なかたちと絵付け、釉薬による多様な表情が持ち味。陽光を思わせるほんのりと明るいうつわが、早春の節句を一層華やかに彩ります。快晴ながらまだまだ風に冷たさの残る取材当日、お庭に目を転じれば、草花の芽の丸みにめぐる季節の確かな歩みを感じました。柔らかな光あふれる春はもうそこまで来ています。

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京町家のくらし 4月 //contents/read/kyo_machiya/kurashi05/ Fri, 14 Apr 2023 05:30:53 +0000 #

第5回 杉本節子さんに聞く「京町家 一服に憩う」 京町家のくらし

杉本節子さんに聞く京町家のくらし
杉本家当主 杉本節子さん
京の人々は四季の移ろいを楽しみ、心地よいに過ごすため、くらしに様々な工夫を凝らしてきました。それらは長年にわたって研ぎ澄まされ、その所作、室礼には美しさが宿っています。歴史ある杉本家のご当主杉本節子さんから、凛とした京町家の暮らし方を学びます。
重要文化財杉本家住宅:町家としては京都市内最大規模に属し、表屋造りによる大規模な町家構成の典型を示します。建造物全体にわたって江戸時代に熟成された京大工の技量が遺憾なく発揮され、江戸以来の大店の構えを現在によく伝えています。

早春の格子の間

第5回 京町家 一服に憩う

ほころぶ蕾が京の町に春の訪れを告げます。
冬を尽くして迎えた光あふれる季節を迎える喜びに、花も鳥も目覚めを歌い、花々に彩られた古都は一層の華やかさに包まれます。四条通のアーケードを避け、あたたかい日差しを楽しみながら綾小路を西へ。早春の杉本家の町家は、高くなりつつある陽光に陰影を和らげた明るい表情で迎えてくれました。

おうすの時間

杉本家では、午前10時と午後3時頃、家事がひと段落ついた頃合いに、おうす(薄茶)の時間を持たれます。水屋箪笥からお道具一式を収めた色紙箪笥を取り出し、おうすを点ててつかの間の休息を取られるのです。煎茶より手間がかかると思われるおうすですが、ご家庭ならお好みに合わせて濃さや量を自由に調整できるうえ、茶葉の始末が不要なため、お道具を揃えればごく簡単に日々の暮らしに取り入れることができます。杉本家のお薄の時間もなにかと忙しい家事の合間のこと。正式な手前ではなく、略式で点てられますが、一服のおうすは心をほどき、お互いを労う和やかな会話の生まれる大切な時間です。

八畳間より庭を望む

手づくりのお菓子と共に

杉本家の常の日のおうすの時間には、手作りのお菓子が楽しまれることも。
そのひとつ、ご祖母様の自慢のひと品でもあったゆべしはお庭で取れたゆずを使って作られます。
薄く切ったものを口に運べば、柚子のほろ苦さと味噌の甘さが広がり、おうすに良く合います。白味噌が用いられるそのレシピは、杉本節子さんに受け継がれ、今でも作られています。手づくりのお菓子といえば、お母さまが作られるクレープも杉本節子さん幼き頃の想い出の味。こんがりと焼き目のついた生地を折りたたみ、黒糖を振ったすっきりとしたなクレープは杉本家では「田舎せんべい」と呼ばれバターの香り高い出来立ての美味しさを懐かしく振り返られました。

白川の枝垂れ桜

京菓子とうつわ

公家文化に親しみ、社寺や茶家を多く擁する京都には、様々な行事や 儀式に献上されてきた京菓子があり、いまも多くの老舗京菓子店が美意識と技を競います。季節感をなにより尊ぶ京菓子は2週間ごとに季節が変わるとされ、小さなお菓子に表現される見事な四季折々は工芸品のような佇まいを見せます。今回のお菓子はいずれも鶴屋吉信さんのもの。洗練された季節感と風味豊かな京菓子づくりで知られます。
「四季折々に意職人が凝らされた菓子を選ぶ楽しさは、京菓子がくらしに根付いている京都ならではのものですね。それに合わせる器はお菓子の風情を引き立ててくれる組み合わせとなるよう、かたちや色味を吟味すれば良いと思います」という杉本節子さんのアドバイスにより、色とりどりながらほんのり淡い春の京菓子には、色味を抑えたすっきりとしたなうつわを選びました。昨日までの枝の蕾がにわかに薄桃色に色づき、日を追うごとに陽光が温もりを増すなか、京の町は春たけなわを迎えます。

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京町家のくらし 5月 //contents/read/kyo_machiya/kurashi06/ Fri, 14 Apr 2023 05:30:53 +0000 #

第6回 杉本節子さんに聞く「京町家の五月人形」 京町家のくらし

杉本節子さんに聞く京町家のくらし
杉本家当主 杉本節子さん
京の人々は四季の移ろいを楽しみ、心地よいに過ごすため、くらしに様々な工夫を凝らしてきました。それらは長年にわたって研ぎ澄まされ、その所作、室礼には美しさが宿っています。歴史ある杉本家のご当主杉本節子さんから、凛とした京町家の暮らし方を学びます。
重要文化財杉本家住宅:町家としては京都市内最大規模に属し、表屋造りによる大規模な町家構成の典型を示します。建造物全体にわたって江戸時代に熟成された京大工の技量が遺憾なく発揮され、江戸以来の大店の構えを現在によく伝えています。

第6回 京町家の五月人形

京を囲う山々の緑いよいよ濃く、爽やかな風が心地よい季節。
清浄な香りと初夏らしい瑞々しさを湛えた菖蒲も盛りを迎えます。菖蒲の節句ともよばれる端午の節句はここ京都でも大切な節句として迎えられます。幾年にも渡り、子の健やかな成長の願いが込められてきた杉本家の五月人形をご紹介します。

杉本家の床飾り

大和朝廷の発展を飛躍的にもたらした応神天皇と、忠臣として誉れ高い翁姿の武内宿禰。
洛中の商家であった杉本家では、端午の節句にも気品がある姿の人形が好まれました。
明治期の商家の床飾りの様子をよく伝えています。

応神天皇の五月人形

武を誇る鎧兜姿ではなく、烏帽子姿に鮮やかな狩衣、男雛のようにやさしく柔らかな表情の応神天皇。
狩衣の下からのぞく鎧が、尚武を願った五月人形であることを物語っています。

左:源義経
右:明治天皇

杉本家九代目婦人のご実家ゆかりの人形

鎧兜に身を固め表情も勇ましい源義経。江戸後期のものと言われています。口元をきりりと引き結んだ表情に険しさはなく、典雅で品のあるお顔立ちです。
珍しい洋装の明治天皇の人形は、老舗で知られる大木丸平人形店で誂えられた限定品。それぞれの時代や世相を反映する人形の特徴が見て取れます。
驚くほどの精緻さで作り込まれた刺繍や飾り房に、京の職人たちの優れた技巧が存分に生かされました。

端午の節句の味といえば、粽や柏餅。龍を退けたという中国の故事に因んだ粽、新芽が出るまで古い葉を残すことから子孫繁栄の象徴とされる柏、いずれも願いを込めて食される節句の一品です。
京都の柏餅は、白味噌に砂糖を加え、飴色になるまで練った白餡が好まれています。
様々な姿で美と技を今に伝えてくれる杉本家の五月人形。
いずれも武者人形でありながら、表情には静かな気品が漂います。そのまなざしには子の健やかな成長を願った親の想いがこもり、優しい光を帯びてさえいるようです。

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京町家のくらし 6月 //contents/read/kyo_machiya/kurashi07/ Fri, 14 Apr 2023 05:30:53 +0000 #

第7回 杉本節子さんに聞く「京町家の夏迎え」 京町家のくらし

杉本節子さんに聞く京町家のくらし
杉本家当主 杉本節子さん
京の人々は四季の移ろいを楽しみ、心地よいに過ごすため、くらしに様々な工夫を凝らしてきました。それらは長年にわたって研ぎ澄まされ、その所作、室礼には美しさが宿っています。歴史ある杉本家のご当主杉本節子さんから、凛とした京町家の暮らし方を学びます。
重要文化財杉本家住宅:町家としては京都市内最大規模に属し、表屋造りによる大規模な町家構成の典型を示します。建造物全体にわたって江戸時代に熟成された京大工の技量が遺憾なく発揮され、江戸以来の大店の構えを現在によく伝えています。

第7回 京町家の夏迎え

「家のつくりようは夏を旨とすべし」と徒然草にあるように、くらしにおいて蒸し暑さは寒さよりも凌ぎ難いとされてきました。三方を山々に囲まれ厳しい暑さで知られるここ京都の町家では、建具を涼やかなものへと取り換え、夏を迎える支度を整えます。

建具替え

障子、襖を夏建具へ変える建具替え。杉本家では梅雨の収まる7月ごろに行われます。庭に萌える緑が障子を染める様子は、この時期ならではの風情です。

夏の陰翳

簀戸(すど)と簾(すだれ)は、強い陽射しを和らげ風を招く夏の建具。飴色の建具が作る翳りに身を置けば、まるで木陰に憩うかのようです。

五月雨の庭

細かな五月雨に濡れる庭の若葉。運ばれる風に濃い新緑の香りを感じます。仏間庭では、滑石が黒くしっとりとした光を湛えます。唐銅水盤に滴る水音、海を模して据えられた蟹の置物が涼やかな水辺を思わせます。

光線を和らげて風を招き、雨音や葉擦れを届かせる夏の建具は、五感の全てで涼しさを味わうための思想と工夫に溢れています。卓上のうつわを夏のものへと変えることも涼をよぶ工夫のひとつ。渡る風に注がれた冷茶が揺れるガラスの冷茶碗は夏のロングセラーです。薄手の衣へ替えるように、室礼を夏のものにかえてゆく。合理的であるために絶えずつづけられてきたくらしの工夫は、空調とは異なる心地よい涼しさを今なお私たちに実感させてくれます。

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京町家のくらし 7月 //contents/read/kyo_machiya/kurashi08/ Fri, 14 Apr 2023 05:30:53 +0000 #

第8回 杉本節子さんに聞く「京町家の屏風祭り」 京町家のくらし

杉本節子さんに聞く京町家のくらし
杉本家当主 杉本節子さん
京の人々は四季の移ろいを楽しみ、心地よいに過ごすため、くらしに様々な工夫を凝らしてきました。それらは長年にわたって研ぎ澄まされ、その所作、室礼には美しさが宿っています。歴史ある杉本家のご当主杉本節子さんから、凛とした京町家の暮らし方を学びます。
重要文化財杉本家住宅:町家としては京都市内最大規模に属し、表屋造りによる大規模な町家構成の典型を示します。建造物全体にわたって江戸時代に熟成された京大工の技量が遺憾なく発揮され、江戸以来の大店の構えを現在によく伝えています。

第8回 京町家の屏風祭り

祇園祭は京の町が最も華やぐハレの行事です。大いににぎわう山鉾町の家々では、格子を外して道行く人々に所蔵する屏風を披露する「屏風祭り」が習わしとして行われていました。町家の減少とともに「屏風祭り」を行う家が少なくなるなか、杉本家はこの晴れやかな習わしを守り、受け継いできました。

熊代繍江(熊斐)1693-1773

盧鴈図屏風

集い戯れる雁と羽ばたきに葉を揺らす盧。絶えず変わりつづける水辺の一瞬を描きとめています。変化に富ませた雁の姿態、盧の折れ葉の細やかな描出に高い筆技が見て取れ、生き生きとした印象を見るものに与えます。

俵屋宗達(生没年不詳)

秋草図屏風

そよ吹く秋風わたる秋の野。金地に描かれた秋草は、蝋燭の灯りの下での鑑賞を想定されたものと考えられ、ゆらぐ光に陰影を得て浮かび上がります。人知れず暮れてゆく野の静けさが伝わります。

祇園祭と鱧

鱧は梅雨の雨を飲んで美味しくなると言われていました。梅雨明けの7月頃より旬を迎えますが、京ではちょうど祇園祭のころ。京いちばんのハレの行事に欠かせない旬の味として愛されています。夏の旬味は、涼やかなうつわで迎えたいもの。夏日に身を晒してみたとき、目に心地よい色かたちを選べば、自ずと食卓は涼を求める雰囲気にまとまります。雨上がりの緑濃い庭を眺めながら一献。まもなく訪れる華やかな宵を待ちます。

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京町家のくらし 8月 //contents/read/kyo_machiya/kurashi09/ Fri, 14 Apr 2023 05:30:53 +0000 #

第9回 杉本節子さんに聞く「京町家の夏の行事」 京町家のくらし

杉本節子さんに聞く京町家のくらし
杉本家当主 杉本節子さん
京の人々は四季の移ろいを楽しみ、心地よいに過ごすため、くらしに様々な工夫を凝らしてきました。それらは長年にわたって研ぎ澄まされ、その所作、室礼には美しさが宿っています。歴史ある杉本家のご当主杉本節子さんから、凛とした京町家の暮らし方を学びます。
重要文化財杉本家住宅:町家としては京都市内最大規模に属し、表屋造りによる大規模な町家構成の典型を示します。建造物全体にわたって江戸時代に熟成された京大工の技量が遺憾なく発揮され、江戸以来の大店の構えを現在によく伝えています。

第9回 京町家の夏の行事

八月。山に囲まれた京の町はうだるような蒸し暑さ。路上の照り返しに辟易する猛暑にあっても、杉本家の夏座敷の翳りのなかに身を置けば、屋内を吹き渡ってゆく風が火照りを鎮めてゆきます。杉本家の八月は、先祖への畏敬の念を深め、想いを巡らせる月です。お盆とならんで杉本家の夏の大切な行事である「宿場入り」をご紹介します。

左)奈良屋看板 京都に本店を構え、千葉佐原・佐倉に支店を持つ「他国店持京商人」であった。
右)明治期の看板 かつて手掛けていた製茶業が看板に残る。

宿場入り

杉本家初代は享保二年(1717年)に京の呉服商へ奉公にあがり、精勤の末独立別家を許されて烏丸通四条下ルに呉服商奈良屋を開いたのは寛保三年(1743年)8月5日のことでした。杉本家はこの日を「宿場入り」(暖簾わけの意味)、すなわち創業記念日として今日にいたるまで祝ってきました。

8月5日の宿場入りの日。座敷床に飾り付けられた杉本家代々ゆかりの品々。

宿場入りの床飾り

最も大切に受け継がれてきた軸は、宿場入りに際して買い揃えられた品々の仔細を軸に仕立てたもの。鍋、釜から蝋燭、墨、筆、帳面など、店を構えるにまず必要とされたおよそ百品目が細かく記録されています。また、三代目の記した「教文記」と「定例書」には、丁寧と行儀、奉仕の精神が説かれ、諸事倹約の一方で付き合いには不義理なきようとの戒めが記されたもので、かつては商売の節目ごとに朗読披講されていました。これらの古文書の他、東海道を下った際に使われた衣類や身の回りのものが飾られます。

受け継がれる先人の想い

先人が遺した教えや戒めを、後世の人々が受け継いでゆく。子孫の繁栄を願う品々に触れると、時代が移っても人としての在り方が不変であることを感じます。杉本家の宿場入りには、現代を生きる人々にも多くの価値ある教えが込められており、それ故、欠かすことなく継承されてきたのではないでしょうか。幾代にわたり、宿場入りに集った方々へ涼を届けたであろう座敷庭を眺めながらいただいたのは懐かしい冷やしあめ。ほんのり香る生姜の風味に簀戸ごしの風をより涼しく感じました。

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京町家のくらし 9月 //contents/read/kyo_machiya/kurashi10/ Fri, 14 Apr 2023 05:30:53 +0000 #

第10回 杉本節子さんに聞く「京町家 秋の気配」 京町家のくらし

杉本節子さんに聞く京町家のくらし
杉本家当主 杉本節子さん
京の人々は四季の移ろいを楽しみ、心地よいに過ごすため、くらしに様々な工夫を凝らしてきました。それらは長年にわたって研ぎ澄まされ、その所作、室礼には美しさが宿っています。歴史ある杉本家のご当主杉本節子さんから、凛とした京町家の暮らし方を学びます。
重要文化財杉本家住宅:町家としては京都市内最大規模に属し、表屋造りによる大規模な町家構成の典型を示します。建造物全体にわたって江戸時代に熟成された京大工の技量が遺憾なく発揮され、江戸以来の大店の構えを現在によく伝えています。

明治3年の杉本家住宅棟上と同時期の作といわれる石づくりの兎。
やわらかな毛の質感と豊かな丸みに石の質感が生きる。

第10回 京町家 秋の気配

初秋を迎えてなお、残暑続く京の町。わずかな陽光のやわらぎに見上げると、空高く横切るすじ雲に夏が去ったことを感じます。祭礼の続いた季節が過ぎ、静けさを取り戻した京の町。少しずつ近づく秋の兆しを探しに杉本家を訪問しました。

前庭に咲き乱れる萩と、フジバカマに羽を休めるツマグロヒョウモン。

初秋の庭

移ろう季節は、花々の便りによっても運ばれてきます。杉本家住宅には数多の草木が配され、季節ごとに庭々の表情を彩ります。僅かな気温の変化を感じ取り、開花してゆく秋草は愛らしくもはかなげ。か細い茎を野分に揺らす様子はこの季節ならではの風情です。

秋の建具替え

秋も色濃くなる9月下旬には、建具を元に戻す建具替えが行われます。夏の間、日を遮り風を導いた簀戸、簾といった夏建具は障子、襖へと替えられます。また秋の好天は障子紙の貼り替えには良い機会。巻紙になった美濃紙を寸法に合わせたり、糊の硬さを調整するなど充分な手間をかけることで、上質な張りのある障子へ仕上がってゆきます。美濃紙の障子を通る秋の光は、部屋の隅々を優しく照らします。

月待ちの宵

思いのほか足早に訪れる夕暮れも秋の兆しのひとつです。暮色がせまり、ひと際高まる虫の音が澄んだ空気を震わせます。うつわはそろそろざっくりとした質感が似合い始めるころ。名月を待つ宵のひとときに、織部の澄んだ緑色と土の味わい深い備前のうつわを選びました。静かに盃を重ねれば、まもなく東山の稜線が月光に白みはじめます。

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